増田  豊

循環農学類

増田  豊 ますだ ゆたか

准教授

研究室番号
C2-209

教員・研究室

取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 家畜育種学
研究テーマ データに基づく確実な選抜で家畜の性質を遺伝的に改善する
学びのキーワード 育種改良データサイエンスゲノム選抜統計学乳牛肉牛
教育・研究への取り組み 家畜の育種とは、家畜の群れを遺伝的に改善することです。そのためには、多数の観測データと血統記録を解析し、遺伝的に優れた個体を見分ける必要があります。近年では、DNAデータの活用が始まり、家畜のゲノム育種が幕を開けました。本研究室では、家畜のデータに基づく効率的な育種手法について研究しています。
受験生へのメッセージ スーパーマーケットで皆さんが目にする乳製品と肉製品は、ほぼすべて、育種改良された家畜から生産されています。この改良は、遺伝子組み換えもゲノム編集も使わずに、主にデータを解析することで達成されました。家畜育種に限らず、農学は、人間の知恵と膨大な経験により成立してきました。北海道の大地で、先人の知恵に触れてみませんか。

研究シーズ

研究キーワード ゲノム 育種改良 ウシ
家畜の経済形質の効率的な遺伝的改良に関する研究
研究の概要・特徴

家畜の育種改良は、家畜の群れを遺伝的に改善するのが目的です。遺伝的に優れた個体を選抜し、それらを交配して子をとることで、次世代の改良がすすみます。しかし、ある個体が遺伝的に優れているかは、見た目だけではわかりません。見た目によい個体がいたとして、それが遺伝によるものか、あるいは個体管理の結果かは、判断できません。また、そもそも、改良したい形質(生産量・体型・健康・繁殖性など)に、どのくらい遺伝が関与するのかは不明です。これらの「わからないこと」は、多数の個体からデータ(観測記録と血統情報)を集め、それを解析することで「わかる」ようになります。近代的な育種改良は、データを集め、個体の遺伝的性能をあらわす数値(育種価)を算出し、それに基づく選抜を繰り返すことで成立しています(図1)。
 私の研究課題は、家畜個体から得たゲノム情報(DNA検査から得たデータ)を、効果的に育種に利用することにあります。この手法はゲノミック選抜と呼ばれ、日本をはじめ世界中で研究開発が行われ、多くの品種で応用されています。この手法を使うと、生まれたばかりの若齢個体の育種価を、ある程度の精度で推定できます。これにより、若齢個体の選抜が正確になり、世代間隔の短縮が実現でき、育種サイクルが高速化します。この方法を効果的に利用するには「個体の正確な選抜」を考慮できるよう、発想を転換する必要があります(図2)。しかし、未開発の部分も多く、効果的な改良体制には移行できていません。
 私の研究室では、上に掲げた研究課題に関係する、効果的な育種手法を研究しています。
「ゲノム情報を用いた育種価の推定方法に関する研究」「大規模なデータベースを利用した統計的解析手法に関する研究」「効率的な統計的解析を行うためのソフトウエアの開発」
 題材はウシ(特に乳用牛)ですが、方法論はどの家畜種にも応用できます。

図1:育種改良は、大量のデータを解析することで実現する 図1:育種改良は、大量のデータを解析することで実現する
図2:ゲノム情報を有効活用するには、発想の転換が必要である 図2:ゲノム情報を有効活用するには、発想の転換が必要である
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

特に以下の2つの点について、酪農畜産業界および大規模データの解析を必要とする業界への貢献が可能と考えます。

1.家畜の育種選抜プログラムの最適化:ゲノム情報を用いた、より高精度な育種価の推定に関するノウハウを共有できます。ゲノム情報が得られていなくとも、ある程度の観測データがあれば、その家畜群にかかわる系統的環境要因の寄与を定量化できます。また、データは得られているが、未選抜の経済形質に関する分析を行い、その育種改良の可能性について検討できます。

2.ビッグデータから有効な特徴量を抽出する問題の解決:研究の方法は、大規模データに基づく統計的解析であり、これは汎用的な問題解決に利用できます。特に統計モデルの応用が可能な場合には、問題解決に有効です。さらに、そのための統計モデルの検討、計算のためのプログラム開発、結果の可視化も可能です。