出口 辰弥

獣医学類

出口 辰弥 でぐち たつや

講師

研究室番号
動物医療センター 302

教員・研究室

取得学位 獣医学博士
研究室・ユニット名 伴侶動物内科学
研究テーマ ①犬の腫瘍における放射線感受性と代謝活性の関連
②犬の免疫放射線療法
学びのキーワード 犬と猫のがん放射線治療抗がん剤治療免疫療法がん細胞の代謝輸血
教育・研究への取り組み 犬や猫を中心とした伴侶動物の腫瘍診療に取り組んでいます。
特に、放射線治療や抗がん剤治療など、外科手術以外の治療法を活用し、学生とともに診療を行っています。
また、研究では腫瘍の代謝や免疫療法を主なテーマとし、実臨床に直結する成果を目指しています。
受験生へのメッセージ 学生時代から飼い主や動物と直接接する経験を通じて、臨床獣医師として求められる社会的なニーズを実感できます。
このような経験は、いわゆる町の獣医師さん以外の業種を目指す学生にとっても、臨床現場や社会全体のニーズを理解し、多角的な視野を養う大きな糧となります。
獣医療を学ぶことで、幅広い視点を持ち、未来への可能性を広げてみませんか?

研究シーズ

研究キーワード 腫瘍の免疫療法 腫瘍のミトコンドリア代謝 放射線腫瘍学
腫瘍のミトコンドリア代謝機構を標的とした研究
研究の概要・特徴

皆さんが生物や生化学で勉強したエネルギー代謝は、腫瘍の病態把握に重要であり、治療標的としても注目されています。従来、がん細胞はWarburg効果で周知されるように、主に解糖系を利用したブドウ糖代謝によってエネルギーであるATPを得ていると考えられてきました。しかし、近年、X線照射によって腫瘍細胞ミトコンドリアの電子伝達系が活性化することが証明され、照射後のミトコンドリアの活性によるATPの産生が、腫瘍細胞の生存に寄与していることが報告されています。私たちはこれまでに、放射線抵抗性を有するイヌがん幹細胞が放射線照射時にミトコンドリアの電子伝達系を活性化していることを示し、ミトコンドリアの電子伝達系を抑制することが、メトホルミンの放射線増感メカニズムとして重要であることを証明しました(図2)これらの結果を臨床例に応用することができれば、腫瘍の代謝という新しい観点の予後指標を確立し、腫瘍の代謝を標的とした新規の放射線治療が実践でき、腫瘍治療効果を改善する一助となると考えます。

図1. 腫瘍のエネルギー代謝:解糖系、電子伝達系 図1. 腫瘍のエネルギー代謝:解糖系、電子伝達系
図2. 放射線抵抗性の細胞にメトホルミンは放射線増感効果を示す 図2. 放射線抵抗性の細胞にメトホルミンは放射線増感効果を示す
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

感染症予防により、イヌ、ネコをはじめとした伴侶動物のがんに罹患する割合は高まっており、それらを治療することの社会的需要は年々増してきています。
また、動物に対するがん研究は獣医療だけに限定された問題ではなく、医療における根治に至らない腫瘍疾患に対しても適応可能な進展性のある研究と考えます。がん治療におけるヒトの1年および5年生存率は、伴侶動物のそれぞれ3ヶ月および1年生存率に置き換えて考えることができるとされています。腫瘍の新しい治療の開発・効果判定において、獣医療分野でのがん研究は医療よりも迅速に遂行でき、それらの結果は医療と獣医療において相互に有効活用することができると考え、日々研究をすすめています。