長野 秀樹

獣医学類

長野 秀樹 ながの ひでき

教授

研究室番号
中央館905

教員・研究室

取得学位 博士(獣医学)
研究室・ユニット名 予防獣医学分野
研究テーマ 麻しん排除に向けたウイルス側からのアプローチ
学びのキーワード ウイルス遺伝子解析分子疫学遺伝子型
教育・研究への取り組み ウイルス性感染症の拡がりを食い止めるため、その感染伝播のルートや感染源を探ったりしています。そのためのツールとして主に遺伝子解析という手法を使っており、いろいろなものを比較するときに威力を発揮します。実例として、これらの技術を駆使して、日本では麻しんを排除することに成功しました。さらには、今現在、排除状態を保つことができています。
受験生へのメッセージ 獣医師が活躍できる場は多岐にわたっています。その中には少数ではありますが公的研究機関があります。そこでは動物だけではなく、ヒトの感染症を扱う部署もあり、多数の獣医師が活躍しています。皆さんの行く手には大海原が待っていますよ。

研究シーズ

研究キーワード 公衆衛生 ウイルス 細菌
麻しん流行期における遺伝子型の変遷と疫学的意味
研究の概要・特徴

麻しんは、空気感染、飛沫感染、接触感染という多岐にわたる感染ルーツによって感染が拡がる唯一ヒトのみが発症する全身性疾患である。その原因ウイルスは麻しんウイルスで単一血清型のウイルスである。免疫がない状態で感染するとほぼ100%発症すると言われている。有効な治療薬はなく、対症療法のみで対処する。しかしながら、麻しんには非常に有効な予防法として、生ワクチンが存在し、広く全世界で使用されている。この有効なワクチンの適正な使用と行政上の有効なマネージメントにより、平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋事務局により、日本は麻しん排除状態にあると認定された。平成19、20年には、麻しんの大流行があった日本だが、北海道を含め全国的に麻しんウイルスの検出と分離、遺伝子解析が行われ、その遺伝子型がD5であると同定された。系統樹解析の結果、いくつかの枝に分かれるものの、それ以前から日本で流行しているD5と明瞭な区別をつけることはできなかった。すなわち、日本においてはそのD5が土着株であると認定された。その後、行政指導のもとに大規模なワクチン接種キャンペーンや防遏措置により、患者数が激減した。本D5については平成22年11月以降検出されておらず、日本の土着株であるD5は、日本から駆逐されたといえる。その後もいくつかの小流行はあったが、すべて海外からの輸入株であるこが遺伝子型を決定することに確認されている。このように、流行ウイルスの遺伝子解析を実施することは流行状況を的確に把握するうえで非常に重要であることが証明された。

産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

ウイルス性感染症の原因ウイルスの同定や遺伝子型別を実施することにより、迅速な流行の把握とともに、行政による早期の流行終息に向けた取り組みを行ってきました。これらのことにより健康を維持できる体制の構築に関与しました。