教員・研究室
| 取得学位 | 獣医学博士 |
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| 研究テーマ | 消化管運動調節にかかわる神経伝達物質およびホルモンの作用機序とその比較生物学 |
| 教育・研究への取り組み | 私立獣医系大学に就職し研究教育活動を始めたが、最初は相談やサポートをしてくれる人がおらず立ちつくしたことがあった。しかし、物事、やらずに後悔するより、やって後悔した方が良いと考え当時注目する人がいなかった消化管運動の比較生物学的研究を始め40年近く地道にやってきた。魚類、両生類、鳥類、哺乳類、それぞれの研究成果をまとめて俯瞰することで、系統発生過程で消化管運動調節因子がどのように変わってきたかを見ることが出来た。教育関連では薬理学分野の講義・実習を40年行い、薬で種々の生体機能が変化することを実際に見てもらい「百聞は一見に如かず」、自分の手を動かして学ぶことの大切さを学生に知ってもらった。 |
| 受験生へのメッセージ | 「学問に王道なし」という言葉があるが、まさにその通りだ。大学入試を目指しての勉強、大学に入ってからの勉強、いずれも手間を惜しまず地道にやって欲しい。自ら学んでいくうちに必ずや自分自身の勉強の仕方というものが身についてくる。大学はそれぞれの専門資格を取得して世の中に出ていく場でもあるが、自分自身の学び方を確立する場だ。大学を出てもその後、40年近くは社会の中で活動していく。その中でいろいろな問題が起こり、その度に路を選択していくことになる。この時に役立つのが自分の学び、学び方である。自由に学ぶことが出来る大学時代を大切にして欲しいと思う。 |
研究シーズ
| 研究キーワード | 消化管ホルモン 消化管運動 系統発生過程での役割変化 |
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消化管運動に影響を与えるホルモンおよび神経伝達物質に関する比較生物学的研究
研究の概要・特徴
哺乳類の消物質化管運動に影響を与えるモチリン、グレリンや神経伝達物質アセチルコリンがどのような機序で運動亢進を起こすのか、またその生理的役割が脊椎動物の系統発生の過程でどのように変わってきたのかを魚類、両生類、鳥類、哺乳類の胃腸管を用い、生理薬理学的に検討している。特にグレリンやモチリンの作用に動物種差が起きる理由と系統発生の関連性に注目している。モチリンに関しては魚類から陸生四足動物になったことで消化管運動制御に関わるようになったと推測される。参考に以下総説を上げる.
〇Kitazawa T, Kaiya H. 2019. Regulation of GI motility by motilin and ghrelin in vertebrates. Front Endocrinol (Lausanne). 10, 278. doi: 10.3389/fendo.2019.00278
〇Kitazawa T, Kaiya H. 2021. Motilin comparative study: structure, distribution, receptors, and GI motility. Front. Endocrinol. 12, 700884.doi: 10.3389/fendo.2021
〇Kitazawa T and Zhang S. 2024.What is the function of motilin in the rabbit gastrointestinal tract? The Japanese Journal of Veterinary Research 72(3-4) 71-81.
〇Zhang S, Kaiya H, Kitazawa T. 2025. Physiological roles of ghrelin in the regulation of gastrointestinal motility in vertebrates.
Gen Comp Endocrinol. 2025;365:114698. doi: 10.1016/j.ygcen.2025.
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)
消化管の運動は食物を消化するだけでなく、運動により空腹感や満腹感を中枢に伝えるなど需要な役割がある。中でもモチリンやグレリンには食欲増進作用があるので、この関連の物質が食欲を増加させたり抑制したり可能性がある。それ故、両ペプチドの作用を比較生物学的に検討することは多くの有益な情報を提供する。また、最近の知見ではニワトリで成長の早い動物ほど胃腸管でのモチリン受容体の発現量が多いことが知られている。それ故、モチリン受容体発現量の多いニワトリ種の選抜は成長スピードの早いニワトリを作出するマーカーとなり、鶏肉の生産量の増加に寄与できる。