宇佐美佳秀

獣医学類

宇佐美佳秀 うさみ よしひで

教授

研究室番号
中央館907

教員・研究室

取得学位 博士(獣医学)
研究室・ユニット名 予防獣医学
研究テーマ 豚呼吸器病の血清疫学と病原性に関する研究
学びのキーワード 疫学調査ウイルス細菌遺伝子解析
教育・研究への取り組み 新たに発生した家畜の疾病が、農場内にどのように侵入しているか、地域的に伝播しているかなどの疫学調査を実施し、さらに、各疾病の浸潤調査を行う抗体検査で、簡便に測定可能な方法を確立しています。また、養豚場で呼吸器病感染の実態を飼養ステージ毎に調査して、感染を予防するために飼養環境の改善、ワクチン接種及び有効な抗生物質の使用方法などを検討し、豚が健康に飼養できるよう衛生対策指導に取り組んでいます。
受験生へのメッセージ 獣医師の仕事の一つに公務員獣医師があります。この仕事は、畜産農家さんに対して、家畜に病気を起こす病原体を農場内に『持ち込まない、拡げない、持ち出さない』の3原則を守ってもらうため、飼養衛生管理基準の遵守の指導や家畜を病気から守るための検査・研究・診療などを行っています。家畜防疫の専門家となって、社会のニーズに応えられる獣医師として活躍してみませんか。

研究シーズ

研究キーワード 疫学調査 ウイルス 遺伝子解析
豚の呼吸器及び下痢に関する疾病の血清疫学と病原性に関する調査
研究の概要・特徴

 豚呼吸器型コロナウイルス(PRCV)は世界的に浸潤・常在化していることが報告されているが、国内における浸潤状況、病原性などの詳細は不明であったことから、豚群におけるPRCVの浸潤状況、感染・伝播様式及び分離株の遺伝子学的解析を行ったところ、本病は国内に広く浸潤していることが示唆され、分離株は、ヨーロッパ及びアメリカで分離された株と遺伝子学的に異なることが示された。また、養豚場内の飼養豚間で感染が繰り返され、常在化していることが明らかとなった。さらに、単独感染では特に呼吸器症状は示さず、主に鼻腔内限局的に増殖することが明らかとなり、水平感染を起こすものと考えられた。
 豚伝染性胃腸炎ウイルスの抗体検査法として、簡便かつ多検体処理が可能なマイクロ間接蛍光抗体法を確立し、既知の中和試験の成績と比較したところ、両測定法は高い相関が認められ、感度も同程度であり、野外豚の抗体保有状況を把握する検査法として有用であることが明らかとなった。TGE及びPEDウイルスと各々の抗血清を用いて交差試験をしたが、交差は認められず、TGEウイルス抗体のみを検出することが示された。
 豚流行性下痢(PED)の国内における浸潤及び分布状況が不明であったことから、栃木県内の飼養豚について本ウイルスに対する中和抗体を測定し、陽性農場では、飼養用途別、日齢別及び抗体陽性母豚の産子豚の移行抗体の消長も調査した。抗体保有状況は市町村別は26.5%(9/34市町村)、農場別は14.8%(13/88戸)、個体別は5.3%(63/1183頭)で、過去にPEDを疑う下痢症状の発生はなく、不顕性感染であった可能性が推察された。豚流行性下痢(PED)の予防法として母豚用生ワクチンが開発されたが野外での応用例がなかったため、栃木県内の一養豚場でワクチン接種を行い中和抗体価の推移と移行抗体の消長を調べた。母豚はワクチン接種後6か月まで4-8倍を維持し、移行抗体は2か月で消失した。





産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 国内に家畜の新たな疾病が侵入した際には、その疾病の浸潤状況の把握及び対策が重要となります。また、予防法としてワクチンの開発も行われますが、実際に各農場での有効なワクチンの接種時期についても検討が必要であり、様々な疾病に対する血清疫学的調査による国内、各農場における各種疾病の浸潤状況の把握は重要なツールとなります。