石川 志保

循環農学類

石川 志保 いしかわ しほ

准教授

研究室番号
C7-203

教員・研究室

取得学位 博士(農学)
研究室・ユニット名 農業施設学
研究テーマ 家畜にヒトに地球に優しい新たな畜産経営システムを構築する
学びのキーワード 農畜産施設低環境負荷農業IoT省力化軽労化DX
教育・研究への取り組み 農畜産業を取り巻くエネルギー,家畜,ヒトおよび環境に関わるデータや情報を見える化するスマート統合システムの研究開発を行なっています。ここで言う「スマート化」とは,最新技術から生産者目線で必要なデータを体系化するもので,農業者の働き方,家畜の快適性などの現場課題の解決から持続可能な低炭素社会の構築に貢献する研究に取り組んでいます。
受験生へのメッセージ 本研究室は,環境,農業そしてエネルギー利用の橋渡しをするような新しい分野で研究をおこなっています。これは単なるIoTを活用したサービス構築にとどまらず,ウシとヒトの精神的かつ肉体的な負担軽減に大きく貢献することを目指しています。現場に出て,現場のこと,農家さんのこと,農業の本質を一緒に真剣に考えてみませんか?
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研究シーズ

研究キーワード バイオガス 再生可能エネルギー 循環型社会
ふん尿から拓く持続可能なエネルギー循環
研究の概要・特徴

 酪農の盛んな北海道では,乳牛1頭あたり1日約65kgものふん尿が排出されます。これまでは悪臭や処理負担の要因とされてきましたが,実はふん尿から得られるバイオガスは,再生可能エネルギーとして大きな可能性を秘めています。私たちの研究は,この「ふん尿」という有用な資源を地域のエネルギー循環に活かし,酪農・環境・エネルギーの三位一体の課題解決につなげることを目指しています。
 バイオガスは微生物によるメタン発酵によって生成され,発電や熱利用に活用できます(図1)。天候に左右されず安定して得られる点が特長であり,再生可能エネルギーの中でも制御可能な電源として注目されています。近年では発電にとどまらず,燃料や水素など多様な形に変換することも可能で,将来のエネルギー供給の幅を広げる資源といえます。このように,バイオガスは「地域に根ざした再エネ」であると同時に,ヨーロッパを中心に国際的に導入が進むツールであり,温室効果ガス削減とエネルギー安全保障の両面から重要性が高まっています。
 本研究では,ふん尿を効率よくエネルギーに変換する仕組みづくりに加え,電力需要に合わせて発電量を調整する技術や,IoTを活用した牛舎環境とエネルギーデータの統合解析にも取り組んでいます(図2)。これにより,酪農家の労働負担を軽減し,エネルギー利用の最適化や環境負荷の低減を実現します。また,メタン発酵後に残る消化液は,液肥や堆肥として農地に還元可能で,エネルギーと肥料を同時に供給できる点は,循環型農業を支える重要な仕組みです。すなわち「良い餌を牛に与え,ふん尿をエネルギーと肥料に変え,再び農地へ返す」という循環が成立します。このように,ふん尿を出発点としてエネルギー・資源・環境を結びつける「持続可能な循環」を地域に根付かせることが,私たちの研究の大きな特長です。

図1 バイオガスプラント 図1 バイオガスプラント
図2 スマート統合システム 図2 スマート統合システム
産業界等へのアピールポイント(用途・応用例等)

 バイオガスは地域で安定的に得られる再生可能エネルギーです。発電や熱利用に加え,水素や燃料としての利用も見込まれることから,今後のエネルギー多様化に向けて重要な資源と考えられます。本研究では,バイオガスの効率的な利用とともに,電力需要に応じた柔軟な運用を可能にする仕組みづくりを進めています。これにより,電力会社やエネルギー事業者にとっては再エネの安定運用技術として,農業・酪農分野にとっては資源循環や経営改善の手段として活用できるポテンシャルがあります。さらに,IoTを活用した牛舎環境の見える化は酪農家の労働負担軽減や環境負荷低減にもつながります。このように農村地域に賦存するふん尿等のバイオマスを効率的かつ適正に管理し,地域の資源循環を促進します。そして産業界との連携により,持続可能な社会と新たなビジネスの創出を目指します。